次の日のお朝、いつものお手伝いが終わった僕は昨日の続きをするためにお母さんと台所に集合したんだよ?
でもね、そしたらそこに、何でか知らないけどキャリーナ姉ちゃんまで居たんだ。
「あれ? キャリーナ姉ちゃん、なんでいるの?」
「だってルディーンとお母さんが二人でなんかやってるって事は、美味しい物を作ろうとしてるんでしょ?」
キャリーナ姉ちゃんはね、僕とお母さんが台所でなんか作ってるって知って、おいしい物なら私も食べたいって来たんだってさ。
「ルディーンたちだけで美味しいもの食べるなんて、ずるいよ!」
「それは違うわよ、キャリーナ。確かに何かを二人で作っているというのは間違いないけど、私たちが作っているのは美味しいものじゃなくて、それを作るための材料ですもの」
「材料?」
「うん! あのね、僕とお母さんが作ってたのは、お醤油って言うお肉にかけたりお料理に入れたりしたらおいしくなるもんなんだ」
僕はね、キャリーナ姉ちゃんにお醤油の事を教えてあげたんだよ?
そしたらお姉ちゃんは、ちょっぴり残念そうなお顔になっちゃったんだ。
「そっか。お菓子をを作ってるんじゃないんだね」
「ううん、これはお菓子にも使えるんだよ。だってこれにお砂糖を入れて、それをこないだ作ったお芋の団子につけて焼いたらお菓子になるもん」
こないだは大豆で作った粉でお菓子を作ろうと思ったからきな粉もちっぽいものになったけど、ほんとだったらお芋の餅はお醤油とお砂糖をつけて焼くんだって。
だから僕はキャリーナ姉ちゃんにその事を教えてあげたんだ。
「そうなの? だったら、そのおしょうゆってのができたらお菓子も作るんでしょ? だったら、私も一緒にやる!」
「うん、いいよ。一緒にやろ!」
お母さんと二人だけでも楽しいけど、キャリーナ姉ちゃんと一緒でも楽しいもん。
だから僕とお母さん、それにキャリーナ姉ちゃんの3人でお醤油づくりをする事にしたんだ。
「流石に一晩漬けておいたから、塩水はちゃんとしみているみたいね」
「じゃあ、発酵させるね」
お醤油づくりを再開する前に、お母さんが昨日塩水につけておいた大豆と小麦を確認したんだよ。
そしたらこれならもう大丈夫だよって言ったもんだから、僕は最後の発酵をする事にしたんだ。
「ルディーン。これもやっぱり、発酵させたら昨日みたいになるの?」
「ううん。今度ちょびっとしか発酵させないから、見た目はあんまり変わんないと思うよ」」
お母さんはね、僕が発酵させるねって言ったもんだから、中の大豆や小麦が昨日みたいになるんじゃないかって思ったみたいなんだ。
でもね、昨日の発酵は麹菌ってので発酵させたけど、今日は違うもんで発酵させるんだよね。
だからおんなじ発酵スキルを使っても、昨日とは全然違う感じになるんだ。
「少しだけ発酵させるの?」
「うん。昨日のはね、麹菌ってのを増やすための発酵だったんだ。でもその菌は塩水につけたら増えなくなっちゃうから、今度はその菌が出す酵素ってのがちゃんと動くように発酵させるんだって」
この酵素ってのはね、塩水につけるとちょっとずつ発酵を始めるんだって。
でもそのまんまだと、お醤油ができるまですっごく時間がかかっちゃうでしょ?
だからスキルを使って、このかめの中の材料全部を発酵させるんだ。
「なるほど。じゃあ、その発酵が済んだら完成なのね?」
「ううん。違うよ。お酒だって熟成させないとダメだもん。だからこれも全部が発酵し始めたら、今度は熟成スキルを使わないとダメなんだ」
大豆や小麦にくっついてる酵母は、一度動き出しちゃったら火にかけてあっつくしないとずっと働き続けるんだって。
だから全部に回るくらい発酵させたらすぐに熟成作業に入ればいいんだよね。
って事で、さっそく発酵スキルを発動。
でね、鑑定解析を使ってちゃんとかめの中全部で酵素が働き始めたのを確認してから、僕は熟成スキルを使ったんだ。
「お母さん。僕、ずっと熟成させてないとダメだから、昨日とおんなじようにかめの中をかき混ぜて」
「ええ、いいわよ」
塩水が入った大豆と小麦、これの事はもろみって言うんだって。
でね、このもろみってのを熟成させる時は、中に炒る微生物ってのがちゃんと働いてくれるようにかき混ぜないとダメなんだよってオヒルナンデスヨでやってたんだよね。
だからお母さんに手伝ってもらって、かき混ぜながら熟成させる事にしたんだけど、
「ねぇ、ルディーン。ルディーンはじゅくせいスキルってのを使ってるのよね? だったらかき混ぜなくってもできるんじゃないの?」
それを見てたキャリーナ姉ちゃんが、頭をこてんって倒しながらそう聞いてきたんだよね。
「そっか! そう言えばさっきの熟成だって、かき混ぜなくってもちゃんとできたもんね。キャリーナ姉ちゃん、頭いい!」
「でしょ?」
キャリーナ姉ちゃんの言う通り、スキルを使って熟成させるんだからかき混ぜなくっても大丈夫なのかも?
そう思った僕は、お母さんにかき混ぜるの大変だからやめていいよって言ったんだよ。
でもそれを聞いたお母さんは、ダメよって。
「う〜ん、確かにそうかもしれないわ。でもね、二人とも。材料を全部いっぺんに熟成させているのに、もし失敗したら困ってしまうんじゃないかしら?」
「そっか。もし失敗しちゃったら、全部ダメになっちゃう」
お母さんの言う通り、スキルを使ってるから大丈夫って思ってかき混ぜるのをやめちゃったら、もしかすると美味しいお醤油にならないかもしれないもん。
もしそんな事になったら大変だから、お母さんにはそのまんまかめの中をかき混ぜてもらう事にしたんだ。
「ルディーン。中に入ってるのが、なんか変な色になって来たよ」
かめの中に入ってるのは塩水につけた大豆と小麦なんだから、最初は薄い茶色だったんだよ。
それに僕が熟成スキルをかけてるとだんだん濃い茶色になってって、その後もどんどん黒っぽい色になってったもんだからキャリーナ姉ちゃんはちょっとびっくりしたみたい。
でもね、こういう色になってくれないとダメなんだよね。
「あのね、完成しあお醤油は黒みたいな濃い茶色なんだよ。だからこんな色になっても大丈夫なんだ」
「そっか。私、ルディーンが失敗しちゃったんじゃないかって、びっくりしちゃった」
僕がこれであってるんだよって教えてあげると、キャリーナ姉ちゃんはほっと一安心。
お母さんがかき混ぜてるかめの中を覗き込みながら、まだかな、まだかな? ってニコニコしながら出来上がるのを待ってるんだよ。
でね、それからもうちょっと熟成を続けてると、なんとなくこれくらいでいいんじゃないかなぁって気がしたんだ。
、
「ルディーン。できたの?」
「とりあえず熟成はこれくらいでいいんじゃないかなぁ?」
お醤油は料理に使うもんだから、これくらいで大丈夫って感じたって事は多分大丈夫なんだと思うんだよ。
だから僕、すんだもろみに鑑定解析をかけて、どれくらい熟成させたらいいのかを調べてみたんだ。
「う〜ん。大体1年くらい熟成させるといいっぽいのかな?」
「えっ!? ルディーン。もしかしてこれ、これから1年置いとかないとダメなの?」
「あっ、違うよキャリーナ姉ちゃん。あのね、ほんとだったらこれくらい熟成するのに1年くらいかかるんだなぁって言うだけ」
「そっか。あ〜、びっくりした」
スキルを使った熟成はね、ほんとだったらこんなに時間をかけなくってもできるんだよ。
じゃあ何で今回はこんなに時間がかかってのかって言うと、それはどれくらい熟成させたらいいのかを知らなかったからなんだ。
「さっきキャリーナ姉ちゃんが、スキルを使って作るんだったらかき混ぜなくってもいいんじゃないの? って言ってたよね?」
「うん。それがどうかしたの?」
「あのね、僕、お醤油の熟成はかき混ぜないとダメだって思ってたんだ。でももしかき混ぜなくってもいいんだったら、最初っから一気に熟成させてもいいって事だもん。だからどれくらい熟成させたらいいのかを調べといたんだ」
熟成スキルはね、使う魔力によってどれくらい熟成するかが決まるんだよ。
だからこうやってどれくらい熟成したらいいのかを調べとけば、次からはいっぺんに熟成が死んじゃうんだ。
「なるほど。それじゃあ、次に作る時はこんなに時間がかからないのね?」
「うん。でも今みたいに一度にいっぱい作って、その全部がさっきお母さんが言ったみたいに失敗しちゃったらやでしょ? だから今度ちょびっとだけ材料を使って発酵や熟成をやってみたようって思うんだ」
「ええ。それで成功したら、次からは簡単に作れるようになるものね」
次に作る時だって、料を蒸したり塩水につけたりするのはおんなじように時間はかかると思うよ。
でも発酵と熟成は、かき混ぜなくってもいいんだったらすぐにできちゃうって事だもん。
「そしたらお醤油を作るの、すっごく簡単になっちゃうよね」
僕はぐちゃぐちゃに溶けて濃い焦げ茶色になったもろみを見ながら、簡単に美味しいお醤油が作れたらいいなぁって思ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
前にお酒を熟成させた時、ルディーン君はあっという間に数百年分も熟成を進めていましたよね?
なのになぜ今回はこれほどの時間がかかっていたのかという、その説明のような階になってしまいました。
本当はもっと簡潔に説明するつもりだったんだけどなぁ。
しかし相変わらず私に文才が無いため、このような結果に。ちょっと反省。
さて、次回の更新なのですが、実を言うと金曜日どころか、次の月曜日も無理そうです。
それどころか、本当ならその次の金曜日も危ないくらいなんですよ。
ただ、3日が祭日なので出張で疲れていてもなんとか書き上げようと思っています。
と言う訳なので続きは少し開いて11月4日の金曜日更新になってしまいますが、引き続き読んで頂けたら幸いです。